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家庭教師 小森千佳(1) 【序章】

※この作品は別作品の『女子大生 水野果歩』に出てくる〝富田康介〟の高校時代の物語で、前半は恋愛色の強いストーリーですが、ハッピーエンドではないのでご注意してください。

『よかったわねぇ、おめでとう。』


千佳 「うん、ありがとうお母さん。……うん、じゃあ来週帰ろうかなぁ。」


『お父さんにも千佳から教えてあげなさいよ、お父さんきっと喜ぶわ。』


千佳 「うん、そうする。お父さん仕事中?夜携帯に電話すればいいかな。」


実家の母親と笑顔で電話をする千佳の心は、重圧から解放され、清々しく晴れ渡っていた。

大学生である千佳はこの1年、ずっと就職の事で頭を悩ませてきた。

元々大人しい性格であり、人前で話すのも得意ではなかったために、堅苦しい雰囲気の中での面接は苦手。
そのために面接の度に胃が痛くなる日々だった。
実際、この就職活動の間に千佳は数キロ痩せた。
それだけ千佳の中で不安とプレッシャーが大きかったのだろう。

しかし、そんな千佳にも先週やっと内定通知が届いた。

第二志望の企業であったが、それでも通知が来た時は凄く嬉しかったのと同時に、千佳は心底安心した。
これでこの就活のプレッシャーから解放されると。

もちろん、一年後には大学を卒業して社会人生活が始まるから、就職活動だけでこんなにも精神的に参っていた自分が、社会に出てしっかりやっていけるだろうかという不安はまだある。

だがとりあえず面接という大きな不安材料は無くなった。それだけで大分気は楽になるものだ。

それに大学生活はあと1年ある。
残りの学生生活を楽しく充実したものにしよう。そう千佳は思っていた。

大学4年生は出る講義も少なく休みが多いので、自由な時間が多い。
学生の間にやっておきたい事が山ほどある。
行った事のないヨーロッパへの旅行などもしたい。

胃を痛くしていた就職活動とは打って変わって、そういう事を考えるとワクワクする気持ちが止まらないし、本当に楽しい。


しかし普段は割りと真面目な千佳も、この時期ばかりは気が緩んでいたのかもしれない。いや、浮かれていたと言うべきか。

それだけ就活の不安から解放された反動が大きかったのだろう。

千佳の気持ちは開放的になり過ぎていた。

浮かれる事は決して悪い事ではない。
どんなに真面目な性格でも、人生の中でそういう時期があってもいいじゃないか。

それが後々良い思い出になったりするのだ。

しかしその一方で、人間と言うものは浮かれている時には、思わず足を踏み外してしまう事がある。

そして時にはその失敗が原因で、大きな代償を支払うハメになる事も……。



千佳 「あ、そうだお母さん、私が就職する前に家族旅行とか行かない?久しぶりに。うん……うん……えー大丈夫だよ……うん……私も車の運転できるし。」


今、楽しそうに母親と電話をする千佳は想像すらしていないだろう。

これから自分が、取り返しが付かない程人生の道を大きく踏み外してしまう事になるとは……。



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お待たせしてすみません。今週から新作連載始めます。今までのものより比較的短編になる予定です。
そして、今作品は久しぶりにあの人が登場します(笑)

それとコメントを書いてくれた読者の皆さん、ありがとうございます。これからお1人ずつ返答書かせてもらいますね。
[ 2013/12/10 ] TB(0) | CM(4)

家庭教師 小森千佳(2)

大学近くのカフェで、千佳は目の前にあるカプチーノの泡をクルクルとスプーンで回しながら困惑した表情を浮かべていた。


尚子 「ねっ!お願い!千佳しか頼める人いないのよ。」


千佳 「でもぉ……家庭教師なんて私……。」


尚子 「大丈夫よ、千佳は人に勉強教えるの得意でしょ。ほら、前に私に教えてくれた時、凄く分かり易かったし。」


千佳 「ん~……でもなぁ……」


千佳に頭を下げて何かを頼み込んでいるのは、大学入学当初からの友人である尚子だ。

尚子は個人で家庭教師のアルバイトをしており、今現在も複数の学生を受け持っている。

ところが最近恋人ができた尚子は、スケジュールに詰め過ぎていた家庭教師のアルバイトを減らしたいと言うのだ。

それはそうだ。
相手は尚子にとっては人生で初めてできた恋人であり、社会人になる前の年であるこの1年は、なるべく好きな彼氏との時間を大切にしたいと思っているのだろう。

初々しいカップル。今が一番ラブラブな時期だ。

そしてその事情は、親友と言ってもいい程仲が良い千佳も重々承知している。

彼氏ができてからの尚子と言ったら、毎日ニコニコ笑顔で機嫌が良く、見ているだけでこちらまで微笑ましい気持ちになるくらいなのだから。

前々から尚子の恋愛を応援してきた千佳にとってもそれは嬉しい事なのだ。

それで今回、少し前に契約したばかりの1人の生徒を代わりに受け持って欲しいと尚子が千佳に頼み込んできたと言う訳なのだが……。


尚子 「それにここの家、結構お給料良いわよ。ほら千佳、アルバイト探してるんでしょ、ここならそこら辺の学生向けアルバイトと比べれると随分と待遇良いし。」


千佳 「う~ん……そうだけど……。」


確かに千佳はアルバイトを探していた。

就職先も決まり、これから遊びや旅行に行くには、そのための資金を貯める必要があったからだ。

アルバイトもしたいし、やりたい事も沢山ある。だからなるべく時給の良いアルバイトを探したいと思っていた。
そんな時に舞い込んできた今回の話。

尚子が持ってきた書類に目を通すと、確かに待遇は凄く良い。
家庭教師の仕事がこんなにも待遇が良いなんて知らなかったと、千佳が驚く程に。

千佳がそれを尚子に聞くと、この家は他と比べて特別に給料が高いのだという。大体他の家庭と比べて1.5倍から2倍近くあるだろうか。

その理由については、尚子もまだ電話でのやり取りだけで、その家に行った事がないので分からないらしい。

だが何にしても、それが今の千佳にとって魅力的な待遇のアルバイトである事は確かだった。
週に数回学生に勉強を教えるだけでこれだけ貰えるのだから。

しかしこんなに良い話にも関わらず、千佳がその話を引き受けるか迷っているのは、その職種が家庭教師であるからだ。

普段は割かし人見知りをしてしまう性格である自分が、知らない家に行って始めて会う学生にきちんと勉強を教えられるか自信がなかったのだ。


千佳 「私自信ないよぉ……人の受験勉強を教えるなんて……それって結構責任重大でしょ?」


尚子 「そんな深く考えなくても大丈夫よ、私にもできてるんだから千佳にだって絶対できるって。ねっ!お願い!千佳様!一生のお願いです!」


まるで天に願うかのように再び頭を下げる尚子に、千佳はため息をつく。

家庭教師なんて普段の千佳なら絶対に引き受けないが、これだけ親友に頼み込まれたら断れない。


千佳 「はぁ……分かったよ尚子ちゃん……。」


尚子 「えっ?じゃあ引き受けてくれるの?」


千佳 「……うん……今回は特別だけどね。」


その観念したかのような千佳の言葉を聞くと、下げていた頭を上げて嬉しそうな笑顔になる尚子。


尚子 「ありがとー!やっぱり千佳は優しいねっ!あっ、千佳の好きなケーキ頼んでいいよ、今日は私のおごりだから。」


尚子は調子良くそう言って、千佳にカフェのメニューを渡した。


千佳 「いいの?えーっとじゃあチーズケーキ……ねぇ尚子ちゃん、それでその生徒さんって中学何年生なの?」


尚子 「ん?中学生じゃなくて高校生よ、言ってなかったっけ?」


千佳 「えっ!高校生なの!?……そんなの余計に自信ないよぉ。」


千佳は思わずそこで頭を抱えた。
中学生に教えるのと、高校生に教えるのではまるでレベルが違うのだから。

それに大学受験といえば、人生の大事な分岐点だ。
千佳はそれを考えただけで大きな責任を感じてしまっていた。


尚子 「千佳なら頭良いし、気軽に行けばきっと大丈夫だよ。あ、チーズケーキ来たよ。」


目の前に大好物のチーズケーキが運ばれてきても、千佳の不安な表情は変わらない。
こういったプレッシャーに、千佳は滅法(めっぽう)弱いのだ。

自分の大学受験でもどれだけ精神的に追い込まれた事か。


千佳 「はぁ……なんだかまた就活の面接の時みたいにお腹痛くなりそう……。高校何年生の子なの?」


尚子 「確か2年生だったかな、うん。」


千佳 「2年生……切羽詰った3年生じゃないだけ良いかぁ……」


尚子 「そうそう、年下の友達に気軽に勉強教えるような感じで良いと思うよ、うん。……じゃあ千佳、宜しくお願いしますって事でいい?もうチーズケーキも食べてるしね。」


千佳 「……う、うん……。」


こうして少々強引気味な尚子からの頼み事ではあったが、千佳は家庭教師のアルバイトを引き受けたのであった。



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[ 2013/12/10 ] TB(0) | CM(0)

家庭教師 小森千佳(3)

千佳 「えーっと……たぶんこの辺りだと思うんだけどなぁ。」


住所と地図が書かれたメモを見ながら、住宅街の中を歩く千佳。

今日は尚子に頼まれて引き受けた家庭教師のアルバイト、その初日だ。


千佳 「はぁ……やっぱり引き受けるんじゃなかったなぁ……家庭教師なんて……。」


カフェで尚子と話してから2週間程過ぎているが、千佳は正直な所、今でもこの話を引き受けた事を後悔している。

どう考えても家庭教師なんて自分には向いていない。

それにこの緊張感、やはり苦手だ。


千佳 「あ~もう、なんだかドキドキしてきた……どんな家なのかなぁ、もしかして厳しい所だったりして。……でもそうよね、子供のために家庭教師を付けるような親なんて、教育に厳しい人だよね、絶対。はぁ……やだなぁ……。」


そんな風に独り言をブツブツと言いながら歩く千佳だったが、根は真面目な性格であるので、今日のための準備だけはしっかりやってきた。

手に持っている鞄には、自分が受験生の時にまとめていたノートや、一週間程前から作り続けてきたプリントなどが入っている。

自分が教える高校生の子のためにと、問題集やポイントなどを分かりやすくプリントに書いておいたのだ。

それだけではなく、自分も受験生の時の感覚を取り戻すべく、連日徹夜で高校生時代の勉強を復習していた。

一応家庭教師なのだから、何か質問されて答えられないようではいけないと思ったからだ。


千佳 「ん~……え……?ここ?もしかしてこの家なの?」


メモに書いてある通りの場所に着いた千佳は、大きな門の前で足を止める。

そして千佳は目の前に佇む家を見上げて、口をポカーンと開けていた。


千佳 「凄い……大きい家……うそぉ……私こんな家の家庭教師しないといけないのぉ……はぁ……」


表札に目を向けると、そこにはやはり尚子に渡された書類に書かれていたとおりの苗字がある。


千佳 「……富田……やっぱりここなんだ……。」


目の前の重厚な門を見るだけでも、この家が普通の家ではないという事は誰にでもすぐに分かる。

きっとどこかのお偉いさんの家なのだろうと、千佳は思った。

それならば、そんな家の子供に勉強を教えるなんて余計にプレッシャーを感じるし、考えれば考える程自分ではやはり無理だと思ってしまう。


千佳 「……はぁ……帰りたい……帰りたいけど……そういう訳にもいかないかぁ……」


もう来年からは社会人になる千佳。

お腹が痛くなる程のプレッシャーは感じるが、この程度の事でヘコたれている訳にもいかない。

もう大人なんだから。

そんな事を自分の心に言い聞かせ、千佳は重い足どりはであるが、門の端にある呼び出しボタンの前まで来ると、意を決したようにしてボタンを押した。


千佳 「……。」


『……はい、どちら様でしょうか?』


千佳 「あっあの……小森と言います。あの……家庭教師の……」


インターホンから女性の声が聞こえると、千佳は緊張気味にそう声を発した。


『あ、はい、お待ちしておりました。今門を開けますので。』


千佳 「は、はい。」


そう答えてから少し待っていると、機械式の門のロックがガチャン!と音を立てて解除された。

そしてゆっくりと開いた門から、1人の女性が出てきた。
結構年配の女性だ。それにエプロンをしている。

お手伝いさんかなぁと千佳は思いながら、その女性にあいさつをする。


千佳 「初めまして、小森千佳と言います。宜しくお願いします。」


山田 「私はここの家政婦をやっている山田です。どうぞ中へ。」


千佳 「はい。」


千佳の予想は当たっていた。この年配の女性が高校生の子を持つ親には見えない。

家政婦の案内で敷地内に入ると、そこには広い庭と大きくて立派な建物が。千佳はその光景にやはり目を丸くして驚くばかりであった。


千佳 「……凄い……」


まるで美術館の中を歩いている子供のようにキョロキョロと頭を動かしながら、周りを見渡す千佳。

そんな千佳の前を歩いている家政婦の女性は、淡々とした口調で千佳に声を掛ける。


山田 「康介さんの部屋は離れの部屋になっていますので、こちらです。」


千佳 「え?康介さんって?」


山田 「えぇ、これから小森さんに家庭教師を担当して頂くこの富田家の長男、富田康介さんですよ。」


その言葉を聞いて、千佳は思わず慌てるようにして声を出した。


千佳 「えっ?えっ?あ、あの!富田さん家の子供さんて、高校生の女の子じゃないんですか!?」


千佳が慌てるのも無理はない。千佳は尚子にこの話を聞いてから、受け持つ生徒はずっと女子高校生だと思い込んできたのだから。


山田 「何を仰いますか、富田家に女のお子さんはいませんよ。ご存じなかったのですか?」


千佳 「え……あ、私はてっきり……」


山田 「男のお子さんだと、何か不都合でもあります?」


千佳 「い、いえ……そんな事は……」


千佳は咄嗟にそう答えたが、本当はそんな事あるのだ。千佳にとって不都合な事が。

しかしそうこういている内に、2人はその離れの建物の前に着いてしまった。

離れといっても、一見普通の一軒家に見える。いや、寧ろ世間一般の家よりも立派かもしれない。

そんな物が、大きな庭の中に子供用の部屋として建っているのだからやはり普通ではない。


山田 「ここが康介さんのお部屋です。中で康介さんが待っていますので、後は宜しくお願いしますね。では私はこれで。」


家政婦は無表情でそう千佳に言うと、すぐに千佳の前から去ってしまった。


千佳 「え?でも、あの…やっぱり……はぁ……行っちゃった。」


千佳の小さな声には反応せず、大きな建物に入っていってしまった家政婦。

そしてその場に残されて、1人離れの家の前で立ち竦む千佳。

予想外の展開に、千佳の頭は少しパニック状態に陥っていた。


……男の子なんて聞いてないよぉ尚子ちゃん……



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[ 2013/12/10 ] TB(0) | CM(7)

家庭教師 小森千佳(4)

……どうしよう……


離れの家の前に立ったまま、困ったような表情でいる千佳。

家庭教師なんてアルバイト自体自分には不向きだと思っているのに、その受け持つ生徒がよりによって高校生の、しかも男子なんて。

女の子とならまだ想像できた。

千佳には妹がいるので、妹に勉強を教えている感覚でやればと思っていたから。

しかしそれが男の子となれば話は別だ。

元々異性と話すのが得意ではない千佳。
もう半分大人みたいな男子高校生と、2人っきりで勉強をするなんて想像できないし、上手く勉強を教えられる自信もない。


……もう……普通こういうのって女性の家庭教師には女の子の生徒って決まってるものなんじゃないの?……


千佳の頭の中にそんな疑問も浮かんだが、この話をもち掛けてきた友人の尚子は個人で家庭教師をやっていたために、もしかしてそういう決まりがなかったのかもしれない。


千佳 「はぁ……困ったなぁ……。」


たださえ緊張してたのに、相手が男子生徒だと思うとさらに気が重くなる。

しかしもう約束の時間は少し過ぎてしまっている。

引き受けてしまった以上、ここで帰るわけにもいかない。


……絶対後で尚子ちゃんに文句の電話してやるんだから……


千佳は少々怒り気味の表情で、その生徒がいるという離れの建物のドアの前に立つ。

そしてそこにまた付いていたインターフォンのボタンをゆっくりと指で押した。

ドキドキと高鳴る千佳の胸の鼓動。


……はぁ……緊張するなぁ……どんな子なんだろう……


そして数秒後、建物の中から声が聞こえた。


『開いてるからどうぞぉ!入っていいよぉ!』


千佳 「え?あ、はい……」


中からのその声を聞いて、千佳はドアノブに手を掛ける。言われたとおりドアには鍵は掛かっておらず、ドアはすんなり開いた。


千佳 「お、おじゃましまーす……」


『勝手に奥の部屋まで入ってきていいよ!今ちょっと手が離せないからさぁ!』


千佳 「は、はい……。」


再び聞こえる高校生らしい若々しい声。

千佳はその声に従い、玄関で靴を脱いで建物の中へと入っていく。

この離れの建物は平屋の造りになっているようだったが、中は結構広い。

玄関から少し廊下を歩いた所にドアがある。おそらくその部屋にその子はいるのだろう。


……それにしても子供用にこんな家を一軒与えるなんて、やっぱり普通の家庭じゃないよね……


千佳はそんな事を思いながらその部屋の前までくると、緊張している心を落ち着かせるために1つ深呼吸をしてからドアをノックした。


『どうぞ~!』


千佳 「し、失礼しまーす……。」


そう小さな声で言って、ドアを開けた千佳。

すると中はやはり広い部屋になっていて、その奥にソファに座る男の子がいた。

男の子は座ったままテレビ画面を見ていて、手にはゲームのコントローラーを持っている。

どうやら手が離せないと言っていたのは、ゲームをしている最中であったかららしい。


千佳 「あ、あの……富田……康介君だよね?今日から家庭……」


康介 「家庭教師だろ?ったく、家庭教師なんていらねぇって言ったのによぉ、あのバカ親父は。」


千佳 「……え?」


康介 「まぁその辺に適当に座っていいよ、もうすぐこれ終るから。」


千佳 「ぁ……はい……。」


そう言われて、千佳はどこに座っていいのか少し迷ったようにしながら、康介が座っているものとは別にあったソファにゆっくりと腰を下ろした。

そして千佳はしばらく康介がゲームをし終わるのを待っていたのだが、その間どうしていいのか分からずずっとソワソワしていた。

まだ緊張が高まったままの千佳は、落ち着かない様子でゲームをしている康介の方をチラチラと見ている。


……高校2年生の男の子ってこんなに大きかったけ……


康介の体格は、おおよそ男の子と呼ぶには相応しくない程大きかった。

きっとソファから立ち上がれば180cmを超える身長だろう。

顔だけ見れば、少しまだ幼さが残っていて確かに高校生だと思うかもしれないが、体付きはすっかり大人。
それどころか千佳の大学の男友達などと比べても、康介はかなり逞しい体付きをしているように見えた。

何か体育会系の部活でもやっているのかもしれない。


康介 「大学生なんでしょ?」


康介は千佳の方にはまだ目を向けず、テレビ画面を見たままそう聞いてきた。


千佳 「ぇ……は、はい……一応。」


康介 「ハハッ、敬語なんて使わなくていいのに、俺より年上なんだし。で、どこの大学?」


千佳 「ぇ……うん……えっと……○○大学……」


康介 「へぇ、じゃあ頭良いんだ。」


千佳 「……そんな事はないけど……」


千佳は年下の男にこんな口調で話し掛けられても、別に気にしないタイプではあるが、康介のその話し方からは、どことなく子供っぽさを感じる。

見た目は身体が大きくて大人っぽくても、やはり中身はまだ高校生であり、精神的には子供なのだろう。

怖いもの知らずといった感じの康介の雰囲気に少し圧倒されつつも、その中にある子供っぽさを感じた瞬間、千佳の中の緊張は少しだけ治まっていった。



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昨日休んでしまってすみません。執筆の進み具合は調子良いです。
[ 2013/12/10 ] TB(0) | CM(0)

家庭教師 小森千佳(5)

千佳 「……。」


千佳がソファに腰を下ろしてからすでに5分以上経っていた。

その間相変わらずゲームをし続けている康介は、千佳の方を一切見向きもせずに、ずっとテレビ画面を見ている。

康介は千佳がこの部屋に入ってきてから、まだ一度も千佳の顔を見ていない。

しばらく黙ったまま待っていた千佳だったが、さすがにこのままずっとソファに座っているだけではいけないと思い、重い口を開いた。

千佳は家庭教師という仕事をしに、ここまで来たのだから。


千佳 「あのぉ……康介君……いつまで……」


康介 「……名前、何て言うの?」


千佳 「え?……えっと、小森……です。」


康介 「下の名前は?」


千佳 「……千佳……」


康介 「ふーん……小森千佳さんかぁ、いい名前だね。」


千佳 「ぇ……あ、ありがとう……。」


そう言ってようやく手に持っていたコントローラーを置いた康介は、ゲームの電源を切った。

するとそこで漸く(ようやく)康介の目が千佳の方を向く。


康介 「……へぇ……なるほどね。」


康介は千佳の顔をジロジロと見ながらそう呟いた。

そして千佳を見る康介のその口元は、ニヤニヤと笑っている。

千佳はどうして康介が自分の顔を見て笑っているのかよく分からなかった。

初めて会った人に笑顔を作っているという感じではない。明らかに、何か含み笑いをしているような印象。


康介 「ところでさ、俺なんて呼べばいい?」


千佳 「え?」


康介 「家庭教師だから、やっぱり小森先生とか?それとも千佳先生?」


千佳 「あ、私の呼び方……そっか、どうしようかな。」


康介 「前に受け持った人には何て呼ばれてたの?」


千佳 「私、家庭教師は今回が初めてだから……。」


康介 「へぇ、そうなんだ。それで緊張してるんだ?」


千佳 「う、うん……。」


康介 「ハハッ、そっかぁ。じゃあ千佳先生でいい?」


千佳 「先生なんてちょっと恥ずかしいけど……うん、いいよ。私は康介君でいいかな?」


康介 「いいよ。よろしく、千佳先生。」


千佳 「うん、よろしく。」


やっとちゃんとした会話ができて、千佳は少し安心していた。

さっきまで黙々とゲームをしていた時は、取っ付き難い性格なのかとも思ったが、こうやって話してみると康介の印象はガラっと変わった。

素直で優しい子なのかもしれないと。

相変わらず敬語を使わない話し方ではあるが、良い意味で捉えればフレンドリーな話し方でもある。

それに千佳は康介の顔を見ながら、学校では女の子にモテるんだろうなぁと思った。

背が高くて男らしいスタイルと、まだ少し幼さは残っているものの整った顔立ち。
例え芸能界に居ると言われても、おそらく何も違和感を感じないだろう。


康介 「そうだ、千佳先生何か飲む?お茶かジュースか……酒もあるけど。」


康介はそう言って、部屋の置いてある冷蔵庫の方へ歩いていく。


千佳 「え?お、お酒!?康介君高校生でしょ?駄目だよそんなの飲んでちゃ。」


康介 「冗談冗談、先生って真面目なんだな。じゃあお茶でいい?」


千佳 「う、うん……。」


千佳の方が年上なのに、まるで康介に玩ばれているかのようなやり取り。

少し緊張気味の千佳に対して、余裕たっぷりの康介。

これではまるで先生と生徒が逆になってしまっているかのようだ。


千佳 「あ、そうだ……康介君、今学校の授業ってどの辺まで進んでるのかな?私、一応簡単なテスト作ってきたから、とりあえずそれをやって……」


さっそく家庭教師としての仕事を始めようと、千佳はそう言いながら持ってきたカバンから徹夜で頑張って作ってきたプリントを出そうとした。


康介 「テスト?いいよそんなの、別にやらなくても。」


千佳 「え……でも……これやらないと何処から教えていいか分からないし……。」


康介 「今日はさ、最初なんだし、自己紹介くらいで終わりにしとこうよ。はい、お茶。」


千佳の前にお茶を出した康介は、自分もソファに座り、そして手に持っていたビールの缶を開け、それをゴクゴクと飲み始めた。


千佳 「でも今日の分からお給料もらう事になってるし……一応そういう事はしないと……あっ!康介君それお酒……。」


康介 「気にしない気にしない、俺喉渇いたときはいつも飲んでるから。それよりさ、もっと先生の事教えてよ。」


千佳 「私の事……?自己紹介はもうさっき……」


康介 「まだ名前と大学しか教えられてないよ。う~ん、そうだなぁ……あっ!そうだ、彼氏は?先生彼氏いるの?」



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[ 2013/12/10 ] TB(0) | CM(0)