FC2ブログ














官能小説 人妻 響子 (1)

「はぁ……」


結婚10年目。専業主婦の響子は、家族の洗濯物を庭で干しながら大きくため息をついていた。

退屈……そう思う事が最近多くなってきた。

夫の洋平は国立大卒で大手自動車メーカーの会社員、収入は充分以上にあり、子供2人を含めた家族4人で暮らしていくには何の不自由もなかった。

毎日働いてくれている夫には感謝している。

しかし、この夫婦に会話は殆どなかった。

仕事が最優先の夫の価値観、育児への無関心さ……

原因はいくつもあるが、小さな価値観のズレが10年という長い期間で少しずつ積もっていき、いつの間にか夫婦の間に大きな溝を作ってしまったのだろう。

夫の洋平は、これだけ稼いでいるのだから文句はないだろ?という態度で、響子が大事な話をしようとしても相手にしてくれない。

数年前までは些細な事で口喧嘩をしたりする事もあったが、今ではその喧嘩さえもしなくなった。

離婚までは考えた事はない。

しかし、あのままずっとぶつかり合っていたら、いずれ家庭は崩壊してしまうと思った。

だから響子と洋平は安全策で、お互いに妥協、妥協、妥協を繰り返した。

私が結婚した夫は、こういう人だから仕方ないのだと。私は子供達が独り立ちするまで母親としてやるべき事をやるだけだと。

夫の全てを嫌いになった訳じゃない。ちゃんと恋愛して、愛して結婚した相手なのだから。

でも今は少しだけ距離を置いておきたい、そうすれば疲れる事はないから。

響子は自分にそう言い聞かせてここ数年を生きてきた。

でもその生活は気が楽になった分、どこか退屈だった。



♪~♪~


響子の携帯にメールが届いた。友人の沙弥からだ。

沙弥とは大学時代からの長い付き合いで、今でも週に一度は会う程の仲。

ケーキが美味しいカフェで、ストレス発散がてらに沙弥と愚痴を言い合う時間は、響子にとっては貴重だった。


『1時にいつものカフェでいい?』


『うん、いいよ。じゃあ後でね。』


響子の性格がどちらかというと真面目で大人しいのに対して、沙弥は昔から活発な女だった。

そして活発過ぎたからなのかは分からないが、実は沙弥は一度離婚を経験している。

離婚の直接的な原因は夫の浮気発覚だったのだが、本当はその頃に沙弥の方も他に恋人を作っていたらしく、本人曰く、互いの正直な気持ちを尊重し合った円満離婚だったらしい。

子供もまだいない自由奔放な夫婦だったから、離婚までスムーズに事を運べたのかもしれない。

響子と沙弥は昔から恋愛に関する価値観も、着ている服のファッションも、その殆どが真逆だった。なのに不思議と気が合う。

両極端な性格だからこそ、お互いに自分に無い物を感じて惹かれあっていたのかもしれない。


「響子もさ、そんなに旦那に不満があるなら彼氏でも作っちゃえば?」


「え?む、無理よ、私にはそんな事……」


「どうして?響子は美人だし、作ろうと思えばすぐにでもできるわよ、年下の男でも年上の男でも、ウフフ。」


「そういう事じゃなくて……私は沙弥とは立場が違うのよ、今も既婚だし、子供達もいるし。それに私、夫と別れたい訳じゃないのよ。」


「それは分かるけど、この先もずーっと我慢するつもり?そんな事してたらいつか爆発しちゃうわよ?どこかでガス抜きしなくちゃ。」


「ガス抜きねぇ……でも私はこうやって沙弥に話を聞いてもらうだけでも充分ガス抜きになっているから大丈夫よ。」


「私が言ってるのはそういう意味じゃないの。男の人に抜いて貰わないと溜まっちゃうモノだってあるでしょ?響子、あっちの方は随分とご無沙汰なんじゃないの?」


「え?……もぉ沙弥ったら、下品な事言わないでよ。」


「ウフフ、人間だったら誰でもそういう欲求は持っているんだから、響子だって例外じゃないはずよ、そうでしょ?肌と肌を合わせるって大切な事よ。」


――肌と肌……か――


確かに響子は長い間セックスをしていなかった。

夫・洋平と距離を置くようになってから、身体を重ねた事はない。所謂、完全なセックスレスだった。

子供を2人出産しているとはいえ、響子はまだ若いし、1人の女である事に違いはない。

人の肌が恋しくなる事も当然ある。

しかしそれでも沙弥のようにオープンにはなれないのが響子なのだ。

貞操観念、世間体、子供達の事も考えれば、不倫や浮気なんて考える前に自然と自分にブレーキが掛かる。


「……沙弥はそういう欲求に素直過ぎるんじゃないの?」


「ウフフ、そうかもねぇ。響子も殻を破ってこっち来ればいいのに。」


「ダメよ、私にはそんな大それた事はできないわ。それより沙弥はどうなの?新しい彼とは上手くいってるの?」


「彼?うん、上手くいってるよ。今度響子にも紹介するね、とっても素敵な人よ。」


世間的には結婚して子供にも恵まれている響子の方が女として幸せであるとされるはず。

でも響子には、鳥が空を飛ぶように自由気ままに生きている沙弥が少し羨ましく思えた。

自分の気持ちに素直に生きていくのって、それはそれで難しい事なのに、沙弥はそれを昔から当たり前のようにやっている。


「なんだかいいわね、沙弥は楽しそうで。」


「楽しいよ~、だからこの楽しみを響子にもお裾分けしたいの。」


「その気持ちだけ受け取っておくわ。私は家に帰ったら現実に戻らないといけないから。子供達のご飯作って、宿題を見て、夫のシャツにアイロンをかけるの。」


「偉いよね響子は。そういう状態でも子供だけじゃなくて旦那さんのアイロンも掛けてあげてるんだから。」


「気の持ち様よ。夫との事は少し距離を置くようにしてから楽になったの。長い結婚生活を維持するには、そうやって工夫して生きていかないと駄目なのよ、きっと。」


「自分を誤魔化して?」


「別に誤魔化してる訳じゃ……」


「それって退屈じゃない?」


「……退屈そうに見える?」


「見える。女として見てくれる男がいない生活なんて、退屈よ。私は響子にはもっと輝いていて欲しいのよ。」


「女として輝く、か……」


確かに夫はもう、自分の事を女として見てくれていないのかもしれない。

家族と暮らしていてもどこか心が満たされないのも、それが原因なのかもしれない。

世間の前でどんなに取り繕っても、沙弥だけにはそれを見抜かれてしまう。

心の奥に潜んでいる本音を。

だから響子は沙弥の生き方を否定できないのだ。


そんな沙弥から「女2人だけで一緒に旅行に行かない?」と誘われたのは、それから数週間後の事だった。
[ 2015/01/05 ] TB(0) | CM(0)

官能小説 人妻 響子 (2)


女2人で一泊二日の温泉旅行。

美味しい物を食べて、温泉で疲れを癒そうよと、沙弥が誘ってくれた。正直凄く行きたい。

家族旅行には年に1度くらい行っていたが、自分が楽しむというより子供達を楽しませるための旅行だったから、殆どゆっくりできなかった。

しかも今年の家族旅行は夫の洋平が急な仕事で参加できなくなり、その代りに義理の両親がついてきたので、いつもより余計に気を使って疲れる旅行だった。

だから一年に一度くらいは家庭から離れてゆっくりしたい。

響子がお願いすると、洋平は意外にも二つ返事でOKしてくれた。(でも行き先とかは全く聞いてこなかったのでたぶん興味がないだけだと思う)

子供達は実家の両親が預かってくれる事になり、急な話だったにも関わらず、すんなり旅行には行ける事になった。


「やった!じゃあ決まりねっ!」


「うん、ありがとね沙弥、誘ってくれて。」


「ウフフ、響子が色々と溜め込んでるガスを抜いてあげようと思ってね。予約も私に全部任せてくれていいから、楽しみにしててね。」


「わぁありがとう!こんなにワクワクするの久しぶり!」



そして当日、2人は早朝に駅前で待ち合わせをした。


「響子ぉ!おはよー!」


「沙弥おはよー!」


2人ともウキウキ気分で笑顔で挨拶。

しかし沙弥が時間通りに来たのは良かったが、響子はすぐにある事に気付いた。沙弥が車ではなく徒歩で駅まで来たのだ。

事前の話では沙弥が車を用意してくれるという事になっていたはずだけど……。


「……あれ?沙弥、車は?」


「車?大丈夫だよ、ちゃんと用意してあるから。」


「用意って、レンタカーでも借りるの?」


「ウフフ、違うよ、もうすぐ迎えに来てくれるから心配しなくても大丈夫だよ。」


迎え?

てっきり沙弥が自分の車を乗ってくるものだと思っていた響子は、いまいち沙弥の言っている意味が分からなかった。

そして程なくしてその迎えの車とやらが到着した。


「あっ!来た来た!おーいこっちだよぉ!」


そう言って大きな四駆の車に向かって手を振る沙弥。

そして車が2人の前で止まると、中から2人の男性が降りてきた。

「お待たせー!」と、2人の男性は沙弥と響子に笑顔を向けた。

――え?誰?――

見覚えのない男性2人の登場に、状況が読み込めない響子はただただキョトンとしていた。


「響子、紹介するね。こっちが私の彼、堂島武君で、そっちが武の友達の長岡良治君よ。」


訳も分からないまま、とりあえず「は、初めまして…」と頭を下げる響子。


「沙弥、この人がいつも話してる響子さん?」


「そうよ、美人でしょ?」


「いやぁ、正直想像以上だわ、なぁ長岡。」


「あぁ、驚いたよ、さすが沙弥ちゃんだね、お友達もこんなに美人さんとは。」


嬉しそうな表情で、品定めするように響子の方を見てくる男2人。

初対面でいきなり美人だのなんだの言われながらジロジロ見られて、響子は益々訳が分からなくなる。


「ちょ、ちょっと沙弥!」


「ん?何?」


「何じゃないでしょう?女だけの2人旅って話じゃなかったの?」


「ウフフ、響子にはしっかりガス抜きしてもらいたいって言ったでしょ?私なりに響子のためを想って準備したのよ。」


「だからってどうして男の人が来るって事前に教えてくれなかったのよ?」


「だってそうでもしないと響子は絶対来ないじゃない。ウフフ、ごめんね騙すようなことして。
でも大丈夫よ、長い付き合いだもの、響子の好みの男のタイプくらい私は熟知してるから。ほら、長岡君、良い感じでしょ?」


沙弥にそう言われてチラっと長岡という男の方を見る響子。

確かに背が高くて顔もカッコイイ。

響子が昔密かにファンだった芸能人だとか、学生時代に憧れていた先輩は、皆同じようなタイプの容姿をしていた。

一目見た限りでは長岡も同じ系統のイケメンだった。


「ね?響子のタイプにピッタリでしょ?」


「……そ、そうじゃなくて!沙弥、私こんなの困るよぉ。」


「ウフフ別にいいじゃない、今回だけよ、ね?今さら武と長岡君に帰れなんて言えないでしょ?車も2人に用意してもらちゃったし、宿ももう4人で予約取ってあるのよ。」


「……もぉ、沙弥ったら……」


沙弥の罠にハマってしまった。冷静に考えてみれば、沙弥ならあり得る事だ。

大学時代も同じように響子は沙弥に騙されて興味のない合コンに連れていかれた事が何度もあった。

長い付き合いなのに今回も何も気付かずに、沙弥を信じきってノコノコ来てしまった。

響子は嘘を付いた沙弥よりも、自分の鈍感さを悔やんでいた。


「じゃあお二人さん、そろそろ出発するから車に乗りなよ。」


「は~い!ほら響子、行くよ!」


「……。」


響子が納得できないような顔でムスッとしていると、長岡が響子に近づいてきた。


「響子さん、この荷物、車に乗せちゃいますね。」


「ぇ?あ、はい、ありがとうございます。」


まさかここまで来て自分だけ〝帰ります〟だなんて言えない。とてもそんな空気じゃない。

沙弥に言いたい文句は山ほどあれど、響子はついに観念して車に乗り込んだ。


官能小説ランキングへ
[ 2015/01/06 ] TB(0) | CM(0)

官能小説 人妻 響子 (3)


車は沙弥の彼氏である堂島武が運転し、助手席には長岡、そして後部座席に響子と沙弥が座り、出発した。


「もぉ……沙弥ったら昔から変わらないのね、困ったものだわ。」


「ウフフ、響子も人の言う事を素直に信じ過ぎちゃうのは変わらないわね。」


自分の思惑通りに事が進んでご満悦な様子の沙弥を見て、響子は呆れていた。


「はぁ……洋平には沙弥と2人の旅行だって伝えてきたのに、何て説明すればいいのかしら。」


「そんなの秘密にしておけばいいじゃない。」


「秘密ねぇ……それもなんだか……」


――でも、私が他の男性と旅行に行ってきたと言っても、洋平はきっと怒らないだろうし、嫉妬もしないんだろうな……もう私なんかには興味なさそうだし…――


「響子さんはご結婚されてるんですよね?」


「え?あ、はい。」


助手席に座っていた長岡が興味ありげに響子に聞いてきた。


「子供さんは?」


「2人いますよ、もう結婚も10年目ですし。」


「えー全然見えないなぁ。」


ありきたりな言葉、お世辞なんだろうけど、若く見られるのは素直に嬉しかった。こんな風に男の人に話し掛けられるのも久しぶりだし。


「でも今日と明日は、それは忘れなきゃ駄目よ。」


沙弥が忠告するように言ってきた。


「忘れる?」


「そっ、既婚者である事も母親である事も忘れるの。でないと、しっかり羽伸ばせないでしょ?」


――沙弥は一体私に何をさせようとしているのかしら……――


移動の車中、響子は初対面の男性2人がいるのもあって、最初は少し居心地の悪さを感じていたが、軽く自己紹介をし合って会話をしている内に男性2人とはすぐに打ち解けてしまった。

沙弥の彼氏、堂島武は冗談好きな面白い人で、長岡も気さくな人柄で印象は良かった。

2人共響子達が住んでいる街のスポーツジムでインストラクターとして働いていて、沙弥は客としてそのスポーツジムに行ったときにこの2人に出会ったらしい。

沙弥に騙されて多少不機嫌になっていた響子だったが、4人での会話は弾み、気付いた時には響子も肩の力を抜いて一緒に笑っていた。

そして途中、昼食は長岡のおススメでとあるピッツェリアに入ったのだが、そこのピザがまた抜群に美味しくて響子は喜んでいた。

こんなに笑うのも、美味しい物を食べてこんな嬉しい気持ちになるのも、なんだかとても久しぶりのような気がする。


「ね?旅行楽しくなってきたでしょ?」


ピッツェリアを出る時に沙弥にそう聞かれた響子は「……うん。」と小さく答えた。

こうやって男女のグループで過ごしていると、学生時代に戻ったような気分になる。

あの頃は恋をしたり失恋したり、自分も、周りの友達も皆ときめいていた。

沙弥の〝男がいないと面白くない!〟という気持ちが少し分かったような気がした。

いい歳して何言ってるんだかって正直思っていたけど、こうやって実際に男の人と交流してみると、自分もまだまだ女なんだと思った。

異性と過ごす時間は楽しい。

夫は私を異性として見てくれない。私も夫は夫、家族であり、もはや異性として認識していなかった。

ここ数年ずっと感じていたあの〝退屈〟は、それが原因だったのかもしれない。


車の座る位置を途中から変えて、沙弥が助手席へ、長岡が後部座席の響子の隣に座った。

沙弥と堂島は恋人同士だから、自然と響子と長岡がペアを組むような形になる。

道中、響子と長岡は互いの事を色々と話した。

そして話し込んでいく内に響子は自分の中で、長岡への興味が徐々に高まっていくのを感じていた。


――長岡良治さん……私よりも1つ年下で独身、か……――


学生時代はサッカー部やアメフト部に所属していたスポーツマン。容姿端麗で、知人に頼まれてモデルの仕事をやっていた事もあるらしい。

それに見た目だけではなく、話も上手だから一緒にいて楽しい。

素直に素敵な人だと思った。

この人といると、なんだか自然と笑顔になれる。

この胸の高鳴り。ずっと忘れてた、この感覚。


――どうしよう、私……――


まさかこんな短時間で恋に落ちた訳では決してないけれど、人妻でも母親でもない、自分の女の部分が目覚め始めてくるのを、響子は確かに感じていた。
[ 2015/01/08 ] TB(0) | CM(0)

官能小説 人妻 響子 (4)

予約していた旅館に到着すると、まだ夜の食事までは時間があったので4人は温泉街を散策する事にした。

沙弥と堂島が先を歩き、少し距離空けてその後ろに響子と長岡が並ぶように歩く。


「良い所ですね。街並みは綺麗だし、自然も沢山あって。」


「癒されますよね。」


「……響子さん、俺なんかが一緒に旅行に付いてきて迷惑じゃなかったですか?」


「え?」


「あ、いや、武(堂島)は沙弥ちゃんの彼氏だからまだ分かるけど、俺は全然関係ないから、驚いたでしょ?」


「長岡さんは沙弥に何て言われて誘われたんですか?」


「それが実は……美人の人妻さんがいるから一緒に来ませんか?って。でも会ってみたら響子さんは真面目な方みたいだから、なんか迷惑だったら申し訳なかったなと思って。」


「迷惑だなんて、そんな事ないです。その……楽しいです、凄く。それに私、そんなに真面目じゃないですよ?」


「俺に比べたら凄く真面目ですよ。俺なんか、美人な人妻と遊べるならって馬鹿みたいに下衆な事を期待して付いて来た男ですから。」


「ウフフ、そうだったんですか。」


「何せこの歳で独身ですからね。それなのにまだ遊び足りないと思ってる。ろくな人間じゃないですよ。」


「長岡さんって遊び人なんですか?」


響子はクスっと笑いながら長岡に聞き返した。


「そうですよ、結婚して子供さんもいる響子さんとも、あわよくばって思ってるような危ない男なんです。」


「あら、ウフフ。危険な男かぁ……長岡さんって面白いですね。」


「そう思わせるのが遊び人なんですよ、響子さんも気を付けないとダメですよ。」


「ウフフ、はい、じゃあ気を付けます。」


自虐的に〝俺は遊び人です〟と言ってくる長岡は、なんだか可笑しかった。

しかもわざわざ響子の事を狙っていると本人に伝えてくるなんて、そんな事を言われたら警戒心が逆に薄れる。

でもどうしてこんなに気持ちが浮かれるんだろうと、響子は自分で自分が不思議だった。

きっと単純に男の人に好意を抱かれてるのが嬉しかったのだと思う。

それは〝愛〟なんて重苦しいものではない。

まだ出会ってから数時間しか経ってない〝あ、いいなこの人〟程度の軽い好意だから、逆に気楽で心地良いのかもしれない。



4人は旅館の女将さんが教えてくれた温泉街の中にある甘味処で美味しい白玉や抹茶を貰いながらまったりと時間を過ごし、日が落ち始める頃に旅館に戻った。

そして食事前に男女に分かれて、この旅館自慢の天然温泉に入る事にした。


「響子は相変わらずスタイル良いね、昔と変わらないじゃない、羨ましいなぁ。」


「そんな事ないわよ。沙弥だって綺麗な肌してる。」


「一応お金は掛けてるけどねぇ、エステ行ったりジム行ったりヨガやったり。」


脱衣所でそんな会話を楽しそうにする響子と沙弥。

女風呂はこの2人以外に人は居らず、貸し切り状態だった。

肝心の天然温泉は成分が響子と沙弥の肌に合っているようで、2人共スベスベになった肌を触って喜んでいた。


「はぁ……良いお湯だね。」


「私の旅館のチョイス、良かったでしょ?」


「うん、ありがとね沙弥。こんな楽しくて癒される旅行は久しぶり。」


「ウフフ、じゃあ長岡君にも満足してくれた?」


「え?」


「響子、長岡君と結構いい感じだったじゃない、もしかして惚れちゃった?」


「……惚れるも何も、長岡さんとは今日会ったばかりよ?」


「そんなの関係ないよ。相性の良い男女っていうのは、会ったその日からでも通じ合う事ができるんだから。」


「あのねぇ沙弥、私は結婚…」


「あっ!ダメよ!その言葉は今日と明日は禁句だって言ったでしょ。」


「そんな事言われても……」


「ねぇ響子、どうなのよ?長岡君の印象は。」


「印象?……印象は、素敵な人だなぁとは思うよ。」


「ウフフ、じゃあ男のチョイスも私は間違ってなかったって事ね。」


「でも、ちょっと軽い感じもするけどね。本人もそう言ってたけど。」


「軽いから良いんじゃない。こういうのは相手に本気になられたら面倒よ。」


「軽いから良い……か。なんだか別の世界で話してるみたい。私は沙弥みたいには生きれない人間だと思っていたのに……。」


「ウフフ、こっちの世界も悪くないでしょ?我慢するのも良いけど、やっぱり現実逃避する手段くらいは持ってないとダメよ。」


「現実逃避か……確かに必要だったのかもね。私、今凄く満たされてる気がするし。」


「じゃあそのまま今夜は、長岡君に癒してもらいなね?」


「え?」


「響子はスタイル良いし、きっと長岡君も喜んでくれると思うよ。」


「そ、それって……もぉ、沙弥ったら、変な事言わないでよ!」


沙弥のセックスを匂わす言葉に顔を赤くする響子。


「え~でも正直響子も考えてたでしょ?今夜は長岡君と、って。」


「ないない。」


「ウフフ、響子欲求不満溜まってるくせにぃ、無理しなくてもいいのよ?」


「もぉ……沙弥はエッチなんだから。」


そう言って響子は沙弥の顔にお湯をかけた。

しかし、話を流したつもりの響子だったが、内心は少し動揺していた。


〝欲求不満溜まってるくせにぃ〟


響子は夫とはセックスレスで、長い間していない。

正直夫とはもうセックスはしたいと思わなかったし、どうでもいいと思っていた。

でも今日、新たに素敵と思える男性と出会って、沙弥にその事を指摘されて、初めて響子は気付いた。

確かに自分は欲求不満だ、と。


「ウフフ、後で長岡君と2人きりにしてあげるからね。」


沙弥に本心を読み取られたようにそう言われてしまった響子は、嫌とも駄目とも言い返すことができなかった。


「……。」


響子にだって性欲はある。

響子は温泉につかりながら、その欲求が身体の奥から沸々と沸き上がってくるのを感じていた。



[ 2015/01/10 ] TB(0) | CM(0)

官能小説 人妻 響子 (5)


響子と沙弥は温泉を出て、エステとマッサージを受けた後、堂島や長岡が待っている部屋へと戻った。

部屋は2つ予約してあったが、食事は1つの部屋で4人で一緒にとる事になっている。


「お、来た来た、エステはどうだった?」


「凄く良かったよ、ね?響子。」


「うん。」


「2人共、浴衣姿が色っぽくて良いですね。」


「ウフフ、そういう事を恥ずかしげもなくさらっと言えちゃうのが凄いよね、長岡君は。」


沙弥がそう言って響子の方を見ると、響子は少し気まずそうな表情を見せていた。


――もぉ……沙弥があんな事言うから変に意識しちゃうじゃない――


響子からすれば、女の自分達よりも長岡の浴衣姿の方が色っぽく見えてしまう。

さすがにスポーツジムでインストラクターをしているだけの事はある。

筋肉ムキムキって訳ではないけれど、浴衣を捲くり上げた長い腕や脚はスラッとしていて、スポーツマンらしく引き締まっているのが分かる。


「あ、料理が来たみたい。ほら、響子は長岡君の隣に座ってね。」


「ぇ……うん。」


数人の仲居が部屋に季節感のある色とりどりな日本料理を運んでくる。


「おお、これは豪華だなぁ。」


「折角の大人の旅行なんだから、このくらい贅沢しないとね。」


沙弥はどちらかと言うと普段から高級志向で良い物を知っているから、予約する時にはしっかり料理もレベルの高い所を選んでいたのだろう。

目の前に並べられた高級日本料理は、見た目だけでなく、1つ1つの食材が丁寧に調理されていて、美味しい上に、お腹いっぱいに食べても胃袋が疲れない。

こんな上品な料理を食べるのも響子にとっては久しぶりの事だった。

何と言っても普段響子は子連れの母であるから、こういう所にはなかなか来れない。小さい子供は旅行先では特に騒ぎたがるし、食事はバイキングが定番、子供ができてからはずっと母としてそれに付き合うしかなかった。


「響子さん、どうぞ。」


「あ、ありがとうございます。」


長岡につがれた酒を口にする響子。料理が美味しいから酒も自然といつもより進んでしまう。

温泉とマッサージで解れた身体に、アルコールがじんわりと広がり、熱くなる。

そして響子は色白の頬をピンク色に染め、隣に座る長岡の横顔を見つめながら、ふと今日長岡に言われた言葉を思い出していた。


〝結婚して子供さんもいる響子さんとも、あわよくばって思ってるような危ない男なんですよ、俺は〟


――長岡さんは、本当にこんな私なんかに魅力を感じているのかしら……――


魅力、女としての魅力。

正直今の自分にはそんなに自信がない。

夫にも飽きられちゃってるような私だし……


「ん?響子さんどうしました?」


「……えっ?あ、ご、ごめんなさい!何でもないです。」


「ウフフ、響子今、長岡君を見てウットリしてたよね?」


沙弥がニヤニヤしながら響子の図星を突く。


「そ、そんな事……」


「え、本当に?」


嬉しそうな長岡。


「性格はともかく、ルックスは響子好みだからねぇ長岡君は。」


「ハハッ、性格はともかくかぁ。」


「長岡君はどうなのよ?響子の事、ストライクゾーンに入ってる?」


「入ってるに決まってるよ、もうど真ん中。」


「ウフフ、ど真ん中だって響子、良かったね。」


そうしゃべる沙弥の口調は完全に酔っ払っていた。


「ちょ、ちょっと沙弥、長岡さんに無理矢理変な事言わせないでよ。」


「いやいや、響子さん、これ俺の本音ですから。」


「……な、長岡さん……」


あまりにストレートな長岡の言いぶりに、響子は顔を赤くする。

このままでは本当に沙弥の思惑通りになってしまう。でもそれを心のどこかで期待してしまっている矛盾した自分もいた。


「響子は昔から真面目すぎるのよ。大学の時から……私と正反対。もっと遊べばいいのに、あんなに早く結婚しちゃってさ。」


「沙弥……」


「長岡君、響子はね、こんな性格だから今の結婚生活に不満があってもぜーんぶ自分の中に溜め込んじゃうの。だ・か・ら、今日は長岡君にそんな響子を解き放ってほしいの。」


「響子さん、そんなに溜め込んでるんですか?」


「い、いえその……溜め込んでるっていうか……」


「溜めてる溜めてる、響子はもう爆発しそうなくらい欲求不満なんだからぁ。」


「ちょ、ちょっと沙弥!いい加減にしてよ!飲み過ぎよ!」


「ウフフ、響子は飲みが足りないのよ、ほら、もっと飲んで。」


こうやって男の人の前で沙弥にからかわれるのも、学生時代以来。

響子は赤面しながら怒っているのに、沙弥は笑ってる。それでもこうやってワイワイしているのが響子は楽しかった。

そしてそんな中で徐々に響子と長岡の距離も縮まっていく。

長岡は酒が回って気が大きくなっているのか、響子の肩に手を回して抱き寄せるようにしてきた。響子は最初少し驚いたものの、嫌ではなかったから、そのまま身を任せていた。

アルコールが効いてきて、隣にはカッコイイ人が居て、部屋には軽い空気が流れている。

なんだかこのまま、ハメを外したくなってくる。

今までの人生でそんな事をした事は一度もないけれど、〝もういいか〟と思い始めている弱い自分がいた。

官能小説ランキングへ
[ 2015/01/13 ] TB(0) | CM(0)