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家庭教師 小森千佳(4)

……どうしよう……


離れの家の前に立ったまま、困ったような表情でいる千佳。

家庭教師なんてアルバイト自体自分には不向きだと思っているのに、その受け持つ生徒がよりによって高校生の、しかも男子なんて。

女の子とならまだ想像できた。

千佳には妹がいるので、妹に勉強を教えている感覚でやればと思っていたから。

しかしそれが男の子となれば話は別だ。

元々異性と話すのが得意ではない千佳。
もう半分大人みたいな男子高校生と、2人っきりで勉強をするなんて想像できないし、上手く勉強を教えられる自信もない。


……もう……普通こういうのって女性の家庭教師には女の子の生徒って決まってるものなんじゃないの?……


千佳の頭の中にそんな疑問も浮かんだが、この話をもち掛けてきた友人の尚子は個人で家庭教師をやっていたために、もしかしてそういう決まりがなかったのかもしれない。


千佳 「はぁ……困ったなぁ……。」


たださえ緊張してたのに、相手が男子生徒だと思うとさらに気が重くなる。

しかしもう約束の時間は少し過ぎてしまっている。

引き受けてしまった以上、ここで帰るわけにもいかない。


……絶対後で尚子ちゃんに文句の電話してやるんだから……


千佳は少々怒り気味の表情で、その生徒がいるという離れの建物のドアの前に立つ。

そしてそこにまた付いていたインターフォンのボタンをゆっくりと指で押した。

ドキドキと高鳴る千佳の胸の鼓動。


……はぁ……緊張するなぁ……どんな子なんだろう……


そして数秒後、建物の中から声が聞こえた。


『開いてるからどうぞぉ!入っていいよぉ!』


千佳 「え?あ、はい……」


中からのその声を聞いて、千佳はドアノブに手を掛ける。言われたとおりドアには鍵は掛かっておらず、ドアはすんなり開いた。


千佳 「お、おじゃましまーす……」


『勝手に奥の部屋まで入ってきていいよ!今ちょっと手が離せないからさぁ!』


千佳 「は、はい……。」


再び聞こえる高校生らしい若々しい声。

千佳はその声に従い、玄関で靴を脱いで建物の中へと入っていく。

この離れの建物は平屋の造りになっているようだったが、中は結構広い。

玄関から少し廊下を歩いた所にドアがある。おそらくその部屋にその子はいるのだろう。


……それにしても子供用にこんな家を一軒与えるなんて、やっぱり普通の家庭じゃないよね……


千佳はそんな事を思いながらその部屋の前までくると、緊張している心を落ち着かせるために1つ深呼吸をしてからドアをノックした。


『どうぞ~!』


千佳 「し、失礼しまーす……。」


そう小さな声で言って、ドアを開けた千佳。

すると中はやはり広い部屋になっていて、その奥にソファに座る男の子がいた。

男の子は座ったままテレビ画面を見ていて、手にはゲームのコントローラーを持っている。

どうやら手が離せないと言っていたのは、ゲームをしている最中であったかららしい。


千佳 「あ、あの……富田……康介君だよね?今日から家庭……」


康介 「家庭教師だろ?ったく、家庭教師なんていらねぇって言ったのによぉ、あのバカ親父は。」


千佳 「……え?」


康介 「まぁその辺に適当に座っていいよ、もうすぐこれ終るから。」


千佳 「ぁ……はい……。」


そう言われて、千佳はどこに座っていいのか少し迷ったようにしながら、康介が座っているものとは別にあったソファにゆっくりと腰を下ろした。

そして千佳はしばらく康介がゲームをし終わるのを待っていたのだが、その間どうしていいのか分からずずっとソワソワしていた。

まだ緊張が高まったままの千佳は、落ち着かない様子でゲームをしている康介の方をチラチラと見ている。


……高校2年生の男の子ってこんなに大きかったけ……


康介の体格は、おおよそ男の子と呼ぶには相応しくない程大きかった。

きっとソファから立ち上がれば180cmを超える身長だろう。

顔だけ見れば、少しまだ幼さが残っていて確かに高校生だと思うかもしれないが、体付きはすっかり大人。
それどころか千佳の大学の男友達などと比べても、康介はかなり逞しい体付きをしているように見えた。

何か体育会系の部活でもやっているのかもしれない。


康介 「大学生なんでしょ?」


康介は千佳の方にはまだ目を向けず、テレビ画面を見たままそう聞いてきた。


千佳 「ぇ……は、はい……一応。」


康介 「ハハッ、敬語なんて使わなくていいのに、俺より年上なんだし。で、どこの大学?」


千佳 「ぇ……うん……えっと……○○大学……」


康介 「へぇ、じゃあ頭良いんだ。」


千佳 「……そんな事はないけど……」


千佳は年下の男にこんな口調で話し掛けられても、別に気にしないタイプではあるが、康介のその話し方からは、どことなく子供っぽさを感じる。

見た目は身体が大きくて大人っぽくても、やはり中身はまだ高校生であり、精神的には子供なのだろう。

怖いもの知らずといった感じの康介の雰囲気に少し圧倒されつつも、その中にある子供っぽさを感じた瞬間、千佳の中の緊張は少しだけ治まっていった。



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昨日休んでしまってすみません。執筆の進み具合は調子良いです。
[ 2013/12/10 ] TB(0) | CM(0)

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