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家庭教師 小森千佳(44)

千佳は住宅街の中の道を歩いていた。

その足取りはゆっくりとしていて、先程から何度も立ち止まっては歩き、立ち止まっては歩きを繰り返している。

この道を前に進むべきなのか否か、千佳は迷いながら歩いていたのだ。

尚子には「辞めちゃいなよ、家庭教師のバイトはさ」と、あっさりと言われたが、千佳にはそう簡単にそれを決断する事はできなかった。

康介の部屋から逃げ出したあの日から、次の家庭教師の日までの3日間を悩み続けたが、結局ズルズルと時間は過ぎ、当日になってしまったのだ。

辞めるのなら作業は簡単だ。

山田という富田家の家政婦に電話をして「辞めさせてもらいます」と、それだけを言えば良いのだから。

部屋のベッドの上で携帯を開き、番号を押すところまでは何度もいったけれど、そこから電話を掛けるためのあと1つのボタンをどうしても押すことができなかった。

辞めてしまえば全てが終わる。

家庭教師という千佳にとって康介とのただ1つの繋がりさえ切ってしまえば、簡単に終わる関係なのだから。

それでもう二度と康介と会う事はないだろう。

そう、会う事はないんだ。

そうすれば、もう辛い想いはしなくて済む。


……終わらさせなきゃ……


しかし、そう思って携帯のボタンを押そうする度に、千佳の頭の中にあの笑顔の康介が現れた。

康介から自分の心を離そうとすればするほど、逆に康介に会いたいという気持ちに心が侵食されていく。

会いたい、もう一度康介君に会いたいと、何度も胸の奥で本当の自分が呟く。

携帯を開き電話をしようとして、やっぱり止める。3日間その繰り返しで、その度に千佳は泣いていた。

そして今日、どうしたら良いんだろうと考えながらも、ここまで来てしまったという訳だ。


千佳 「……はぁ……」


康介に会って、何を言えば良いのかなんてさっぱり分からない。

勉強だって、もう平常心で教える事なんてできっこないのに。

こんな不安定な気持ちのままでは、康介の顔を見ただけで泣いてしまいそう。


……私……何がしたいんだろう……何を期待してるんだろう……報われるわけないのに……


そしてついに富田家の門の前まで来てしまった千佳は、その場にしばらく立ち尽くしていた。

康介の事を忘れる事もできないし、会いたくても自分が傷つく事が怖い。

忘れる勇気も、会う勇気もないというどうしようもない程弱い自分が、ただ小さくて卑怯な期待を抱いてここに立っている。


千佳 「……やっぱり……帰ろうかな……」


十数分そこに立ち続けた千佳は、ボソっとそう声を漏らした。

寸前になって逃げ出したくなる。

そしてまたアパートに帰ってベッドで泣くんだ。

尚子はこんな自分になんて言葉をかけてくるのだろうか。

きっとまた優しくしてくれる。

尚子の優しさが、今の千佳にとっては唯一の逃げ場なのだ。

家庭教師を辞めるとも言えずに、また逃げて休むという大人として無責任な行動。

あの責任感の強いはずだった千佳は、今はいない。

弱った心は、大人としての責任や何もかもから逃げたがっている。

帰ろう。

そう決めて千佳は富田家から引き返して駅の方へ戻っていこうとした。

しかし数メートル歩いた所で、千佳は思わず立ち止まる。


千佳 「……ぇ……」


前から歩いてくる、1人の男性。

制服姿のその男は、康介だった。

そして康介は千佳の存在にすぐに気付くと、何の躊躇もなくあの笑顔で千佳に声を掛けてきた。


康介 「お……あれ、千佳先生じゃん。」


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[ 2013/12/12 ] TB(0) | CM(3)

更新、待ってます( ´ ▽ ` )ノ
でも、ツィッターよりも、こちらのほうに書いてもらいたいです。
[ 2011/12/07 08:03 ] [ 編集 ]

更新ないですねぇ…
Twitterには理由などつぶやかれているのでしょうか??
Twitterを利用しない私にはわかりませんが、どちらも放置でない事を祈るのみ(^_^;)
[ 2011/12/07 00:40 ] [ 編集 ]



続き読みたいです(*≧∀≦*)

更新待ってまぁーす(//∇//)
[ 2011/12/06 01:30 ] [ 編集 ]

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