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官能小説 喰われる人妻 菜穂(10)

天野と共に部屋に向かう途中、菜穂はずっと心の中で葛藤していた。

言われるがままにここまで来てしまっているけれど、本当にこれで良いのだろうかと。

しかしそんな風に迷う時間もそれ程なく、2人は部屋に着いてしまった。


「さ、どうぞ入ってください。」


「……し、失礼します。」


菜穂はドアの前で一瞬躊躇するように立ち止ったものの、天野に入るように促されると、ゆっくりと部屋に足を踏み入れた。

やはり既婚女性である菜穂にとって、夫以外の男の部屋に入るというのは物凄く抵抗があった。

でも今はそんな事は言っていられないのだ。

〝智明が本採用される事〟

菜穂の中ではそれが今一番優先されるべき事なのだから。


露天風呂付きだと言う天野の部屋は建物の最上階にあり、やはり他の社員達が泊まる部屋とは作りが違い、高級感があった。


「これだこれだ、女将が用意しておいてくれた酒、これが美味しいんですよ。さ、そこに座って。」


「……はい。」


言われた通りに部屋にあったソファに腰掛ける菜穂。

この時点で、なんだか長くなりそうだと、菜穂は感じていた。

そしておススメの酒を持ってきた天野は正面の椅子に座るのかと思いきや、嬉しそうな顔をして菜穂の横に座ってきた。バスの時と同じ、肩が触れそうな程の近さだ。

グラスを渡され、そこにたっぷりと酒を注がれる。


「あ、あの……私はこんなには……」


「ん?ちょっと多かったですか?まぁ飲めなかったら残してもらっても結構ですから、さ、どうぞ。」


「はぁ、ありがとうございます。」


ゆっくりとグラスに口を付ける菜穂。

酒は発砲タイプの日本酒だった。

確かにスッキリした味わいで、美味しい。


「どうです?美味しいでしょ?」


「はい、凄く……美味しいです。」


「そうでしょう?良かったぁ、奥さんに気に入って貰えて。ささ、どうぞもっと飲んでください。」


酒の美味しさも手伝ってか、残してしまうだろうと思っていた量を天野に勧められるがままにあっさり飲み切ってしまった菜穂。

天野はそれを見て、空になったグラスにさらに酒を注いできた。


「あ、でもこれ以上は飲み過ぎになってしまいますし……」


「いいじゃないですか、あと一杯くらい。今日で飲まないと勿体無いですから、2人で一本空けちゃいましょう。」


こんな場所で酔い潰れてしまってはいけないという気持ちはあったが、このお酒はあまりアルコール度が高いとも感じなかったから、このくらいなら大丈夫だろうと思った菜穂は、2杯目にも口を付けた。

これで天野の機嫌が取れるならと、菜穂は「本当に美味しいですね」という言葉を繰り返していた。

しかしそれはある意味逆効果だった。

菜穂が天野の機嫌を取ろうとすればする程、天野は調子に乗る。

この部屋で酒を飲み始めてから20分ほど経った頃だろうか、天野は突然菜穂の太ももを浴衣の上から触ってきたのだ。


「やっ……」


不快感から防衛本能が働いた菜穂は、咄嗟に天野の手を払い除けようとしたが、寸前のところでそれを我慢した。

そんな事をしたら、天野が不機嫌になってしまうかもしれないからだ。

下唇を噛んで自分を抑える菜穂。


「それでねぇ奥さん、小溝君の本採用の事なんだがね。」


天野は菜穂の太ももを摩るようにしてイヤらしく手を動かしながらそう話し始めた。


「は、はい……」


「実はもう私の中ではほぼ決まっているんだ。小溝君なら、採用しても誰も文句は言わないだろう。」


「そ、そうですか、ありがとうございます。」


太ももを触られている事に嫌悪感を抱きながらも、菜穂は天野のその言葉にホッとした。

だが話の本題はそこからだった。


「ただし、まだ採用に向けて最後の詰めが残っているがね。」


「最後の……詰めですか……?」


菜穂が少し不安そうにそう聞き返すと、天野はニヤリと怪しい笑みを見せた。

あまりに黒い雰囲気を纏った天野のその表情に、菜穂の不安はさらに大きくなった。


「そう、その最後の条件さえ満たされれば、小溝君を正式に採用できる。」


「条件……」


「そうです。奥さん、正直な話をしましょうか。本当の事を言うと、面接の時点では小溝君を採用するつもりは全くなかったんですよ、全くね。でも私はその後小溝君にチャンスをあげる事にした、なぜだと思います?」


「ぇ……それは……」


「分かりませんか?」


「は、はい……」


「本当に?」


「……はい。」


「では教えましょうか。奥さん、あなたですよ。あなたを一目見た瞬間に私は決めたんです。この夫婦にチャンスをあげようってね。」

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完全に休み過ぎました。すみません……
[ 2014/05/25 ] TB(0) | CM(0)

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